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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)433号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人荻原貴光の上告理由について。

記録によれば、被上告人が「古物営業法二一条に従い本件指輪の占有回復を求める」と主張していること原判決事実摘示のとおりであり、上告会社が古物商なることについては暗黙の主張があるものと認められるから、これに対し、原判決が「上告会社は、その代表取締役たる佐川久一名義で古物営業法による古物商許可を受けて古物営業をしている」事実を認定しても、主張なき事実を認定したことにはならない。のみならず右認定事実は、原判決の挙示する証拠によつてこれを認めるに足りるのである。又、本件指輪を訴外精工堂から買い受けたのは上告会社であることは、上告人が自白したところであり、右指輪が現に上告会社の保管占有にあることは、原判決挙示の証拠によつてこれを窺うに足りるのである。そして古物営業法二一条は、適法な許可を受けていない古物商の場合にも類推適用すべきものと解されるから、古物商を営む上告会社が同条の定める責任を負うべきことは、その受けた許可の適法なると否とにかかわらないものといわなければならない。されば、論旨は、いずれも理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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